八甲田丸 青森へ
8月14日早朝、函館駅まだ薄暗い黎明の中にありました。これから青森ゆき5:20発、青函160便に乗船します。駅のホームには5:00発、札幌行き特急『北斗』81号が停車中です。青函連絡船が海峡の女王とするならば、昭和36年に登場したキハ82系特急用ディーゼルカーは『非電化区間の女王』ともいうべき存在で、総数350両あまりの中、北海道内には最盛期には約150両が投入されていました。しかし寄る年波には勝てず、老朽化により次々と廃車になり、この昭和62年当時は道内にわずか11両が残るのみとなりました。マッカーサーの言葉ではありませんがまさに『老兵は死せず。ただ消え去るのみ』ですね。
隣のホームには後続発の、新鋭の183系ディーゼル特急『北斗』が停まっています。183系はすでに道内のディーゼル特急の主力車両となっていました。しかし時代の流れは容赦なく、2000年(平成12年)に最新鋭のデイーゼル特急キハ261系が登場し、次第に運用範囲を拡大しつつあり、ふたたび世代交代の波がやってくるものと思われます。
連絡船桟橋の途中に、『心にきざもう連絡船の旅』の横断幕が掲げられていて、さらに『この夏、連絡船フィーバー』の文字があります。事実、お盆期間中は積み残しの便がでるなど好評のため乗船規制中であり、この青函160便は臨時便として8月2日から8月17日まで運航されました。しかしさすがに早朝便とあって船内は閑散としており規制はありませんでした。そのためか売店や食堂までもが営業しておらず、食堂で別れの海峡ラーメンを、などの思惑は吹っ飛んでしまいました。
乗船した『八甲田丸』はこれもなじみの深い船で、シンボルマークは『八甲田山とヒツジグサ』です。小雨が降る、肌寒い天候の中、可動橋が上げられ出航です。函館港のシンボル『函館ドック』の大型クレーンが見送ってくれています。この数え切れぬほど連絡船の行き交う姿を目にしていたクレーン2基も、現在は老朽化のため倒壊の恐れありとして、2009年6月に撤去されています。やがて遠ざかる函館山が水平線の彼方に消えると天候が次第に回復してきました(つづく)。

 
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