道中記



摩周丸 海峡をゆく
連絡船の船内では、普通船室の椅子席をいちばんよく利用しました。椅子席は一時、北海道内のすべての特急に使用されていた『キハ82系』ディーゼル特急用車両の普通車のシートをそのまま流用したものであり、二人掛けで、ひとりで専有するにはちょうど好都合だったからです。この日もほぼ満員とはいえ、相席になることはありませんでした。ほかによく利用した椅子席としてはグリーン椅子席があります。
ヘッドレストに読書灯がついており、リクライニングシートは水平近くまで深く倒れ、思いっきりくつろぐことができ、夜行便乗船の際によく利用しました。利用料金は確か1600円だったと思います。あとグループ向きとして、カーペット敷きの升席(ますせき)があります。普通船室とグリーン船室(1100円)の両方にあり、横になって手足を伸ばすことができます。当初はいちばんよく利用したところですが、横になっていて寝返りなどをうつ拍子に隣の人と手足がぶつかったりぶつけられたりで、次第にイヤになり、敬遠するようになりました。それでもゴロリと横になれることから、年配の人たちに根強い人気がありました。ほかについに利用しなかったのが『寝台室』で2段寝台が計4つありました。料金は上・下段とも2400円でした。あとコイン式の『シャワールーム』があり、硬貨を入れると何分間かシャワーか出るようになっていて旅の汗を流すことができました。
今日は朝から駅そばしか食べておらず、空腹だったので名物の『海峡ラーメン』でも食べに行こうと食堂に行くと、長蛇の列だったのであきらめ、売店で『紅シャケ弁当』を購入しました。開けてみると文字通り、白ごはんの上に大きな焼きシャケが載っかっていて、ほかにウメボシとお漬物がついているだけという非常にシンプルなものです。
ほかに売店では『船長のサインカード』や連絡船のテレホンカードに絵はがきなどが良く売れていました。テレホンカードのうち『ジャパニーズドリーム号』は航路廃止後に『十和田丸』が豪華クルーズ船として改装されたもので、しばらく横浜〜神戸間で活躍しました。デッキに出てみると船はちょうど青函航路でもっとも狭い『平館海峡(たいらだてかいきょう)』に差し掛かったところでした。幅はわずか11キロメートルで、高さ23メートルの白い平館灯台が見えています。右手には下北半島の山並みが見えています。キラキラと輝く海を眺める人々のおだやかな背中がとても印象的でした。出航して約1時間30分、船は陸奥湾を出て津軽海峡に入ると少し揺れがひどくなってきました(つづく)。

 
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