花輪線
花輪線の『十和田南駅』のキャッチフレーズは『十和田湖にもっとも近い駅』です。
近いといっても十和田南線のバスで1時間はかかるのですが、もうひとつのセースルポイントが近くにある古代遺跡の『大湯環状列石』です。いわゆる石を環状に配した『ストーンサークル』のことで、とくにイギリスの『ストーンヘンジ』が有名です。日本では北海道から東北地方に数件あり、いずれも縄文時代につくられたものです。
大湯環状列石は1931年(昭和6年)に発見された日本最大のストーンサークルです。
遺跡の使用目的は古代の宗教施設であるとか大規模な共同墓地であるとかの諸説があります。遺跡へは写真の看板の案内にあるように、2駅先の陸中花輪(現「鹿角花輪」)駅から大湯温泉駅ゆきのバスに乗り換えて約25分で行くことができます。
余談ながら現在は、JRバス大湯温泉駅は廃止され駅舎は解体されて、べつに停留所が設けられています。またJRバスの十和田南線も2003年4月をもって廃止され、秋北バスと十和田タクシーによる共同運行へと代替になっています。時代の流れとはいえ、当時利用した交通機関がもうないというのは少し寂しい気がします。
ところでこれから乗車する花輪線の十和田南駅は、全国でも珍しい非勾配の『スイッチバック』の駅です。鉄道におけるスイッチバックとは険しい斜面を上り下りするために設置されるのがふつうですが、ここでは関係なくそうなっており、列車の進行方向が変わるために運転手さんが忙しそうに前から後ろの運転席へと移動します。そのために停車時間が余計にかかります。なぜこのような特殊な構造になったのかは定説はありませんが、一説によるとこの先にかつてあった小坂鉱山への路線延長計画によるものだといわれています。実現した暁には十和田南駅は小坂線の始発駅になる予定でした。夢が立ち消えたあとも、面倒なスイッチバックだけは残ったということです。いまでも駅に列車が着くたびに、運転手さんが急いで前後に移動する様子が見られます。
17:12、十和田南駅から盛岡駅ゆきの普通列車に乗りました。花輪線は深い森の中をいくような感じの路線で、秋田県の大館から岩手県の好摩まで約100キロあまりのローカル線ですが、ほとんどの列車が好摩から東北本線(現「いわて銀河鉄道」)に乗り入れて盛岡まで直通します。僕の乗ったディーゼル列車の1946Dは、驚いたことに車内販売があり、せっかくなのでポテトチップスを買わせていただきました。普通列車に車内販売とは初めての経験でした。
盛岡20:00着。ここから上野行きの寝台特急『ゆうづる2号』に乗りました。青森を18:45に出発した臨時列車で、盛岡は21:29発でした。臨時ということでしょうか、車内には空席が目立ちました。ブルートレインとはいえ『ゆうづる号』は平均時速80キロの俊足ランナーで、非常によく揺れる列車です。上野は翌日、早朝の5:41着。もう少しゆっくり走ってくれてもいいのになあ、とうらめしく思いながら新幹線に乗り継ぐため、がらんとした山手線に乗って東京駅に向かいました(おわり)。

大阪府 S様

 
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