海峡の朝
車内放送で目覚めると進行方向の右手の車窓に函館山が見えていました。
なんだもう朝かと思い、しばらくカーぺットカーの車内でボーッとしている間にも函館山がどんどん近づいてきてもう五稜郭駅です。つぎは終点の函館です。慌てて荷物をまとめているうちに46列車は定刻の4:58に函館駅に到着しました。眠たい目を擦りながら連絡船乗船口へと足を運びます。
青春18きっぷはすでに4枚目の利用に入っていました。今日はこれから函館発5:30の青森行き青函160便に乗り込みます。連絡船は『十和田丸』です。十和田丸は津軽丸型で唯一、横揺れ防止装置の『フィンスタビライザー』を装備しています。両側の船腹からイルカのひれのように突き出したフィンスタビライザーにより、十和田丸は揺れに強い船と重宝がられ、知床半島への旅など国鉄やその後のJR北海道が企画した『イベント運航』によく使われ、航路外をいちばん走った船でした。
8月18日土曜日、今日は朝から快晴です。すでに夜は明けていて金色の朝日が十和田丸を照らしています。空気がとてもすがすがしいです。青函160便の乗客はほとんどが46列車から乗り継いだ人たちで、船内は空いていました。出航が近づくと甲板に人が集まってきました。すばらしい天気で遠くに渡島半島、大沼公園の秀峰『駒ヶ岳』も見えています。函館出航後、おなじみの函館山や函館ドッグが遠ざかると、現役の連絡船のなかでは最年長となった『八甲田丸』と行き交います。あちらも朝日を浴びて気持ちよさそうに海峡を進んでいきます。さすがに睡眠不足でしたので、普通船室でひと眠りすることにしてひとまずデッキを後にしました。まもなく青森入港です、と告げる船内放送があり、再びデッキに出てみると、もう青森港が目の前です。彼方にこんもりと津軽富士の別名を持つ青森県最高峰の『岩木山』(1625m)が迎えてくれています。
このとき三角形の形をした青森港のランドマーク、青森観光物産館『アスパム』はまだ建っておらず(1986年開館)、こうして当時の写真を改めて眺めてみると、いかにも津軽平野という印象を受けます。9:20青森入港。3時間50分の快適な船旅でした。
これから下北半島への入り口である『野辺地』へと向かいます(つづく)。

 
1 2 3 4 5 6  道中記TOPへ
     
 

(c) 2005 Takahashi Satoshi. All Rights Reserved.