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鶴見岳・やまなみハイウェイ
地獄めぐりもいよいよラスト、8番目の地獄『鬼石坊主地獄』です。
規模としてはいちばん小さい地獄で、灰色の熱泥が球状をなして沸騰する様子が坊主頭に似ていることと、鬼石という地名からこの名があります。これで8つの地獄すべて見て回ったことになり、ちょっとした達成感がありました。
レンタカーに乗り込み、『やまなみハイウェイの』大分県側の入り口にある標高1374メートルの『鶴見岳』にロープウェイで登りました。山上では『ミヤマキリシマ』が満開と聞いていたからです。
ロープウェイは『近鉄・別府ロープウェイ』で西日本最大級の101人乗りゴンドラで、所要約10分で高原駅から標高1300メートルの『鶴見山上駅』を結んでいます。ほぼ満員のロープウェイで山上駅に着くと、ツツジのように赤いミヤマキリシマが可憐な花を咲かせていました。
またここは冬季には『霧氷』の名所で、かつて学生のころ同じ大学の友達とふたりで大阪から2000キロ走った九州一周ドライブの際、立ち寄ったとき、見事な霧氷を見たことがあります。山上駅の2階に『人工霧氷装置』がありますがあいにく故障中でした。
山上からの展望は、この日、かなり霞んでいて九重連山は見えましたが、海のかなたの四国方面は見えませんでした。豊後富士の『由布岳』はすぐ隣の指呼のあいだに望まれました。ここからの別府市街の夜景は、よくあるフレーズの『1000万ドルの…』と呼ばれ、夏季シーズンはロープウェイもナイター営業しています。機会があればぜひ見てみたいものです。
ロープウェイから降りて、本日の昼食場所と決めている『由布院』を目指します。
由布院へは『やまなみハイウェイ』を利用します。九州一の有名なドライブコースであるこのハイウェイは正式には『大分・熊本県道11号線(別府、一の宮線)』といい、大分県由布市の水分峠と熊本県阿蘇市一の宮を結ぶ、全長102キロメートルの山岳ドライブウェイで、昭和39年(1964)の完成当時は『有料道路』でした。そのためシーズン中には料金所で大渋滞が発生しました。それが平成6年(1994)にようやく無料開放され、現在に至っています。(つづく)

由布院からくじゅう花公園へ
2009年3月に閉鎖された『水分峠レストハウス』を過ぎると、車窓右手にふたたび『豊後富士』の愛称をもつ美しい山容の『由布岳』が見えてきます。僕の好きな山のひとつで、この山を見るたび『ああ由布院にきたなあ』という思いを強くします。
由布岳の山頂は、猫の耳のようにぴょこんと『東峰』と『西峰』のふたつに分かれており、最高峰は『西峰』の1583メートルです。
由布岳と由布院盆地の絶好の展望台として『狭霧台』があります。ここからは正面に由布院の町並みと背後にそびえる由布岳の雄姿を仰ぎ眺めることができます。しかし展望台は下り坂のちょうど右カーブの入り口にあり、立ち寄りたかったのですが調子よく交通の流れにのってスピードが出ていたため、ついスルーしてしまいました。写真の由布岳は走行中の車内からと盆地内に入ってから撮影したものです。
ところで由布院の地名には『由布院』と『湯布院』のふたつの表記があります。もともとあったのは『由布院』のほうです。それが昭和30年(1955)に『由布院町』と『湯平村』が合併し、湯平村の人たちが『村の漢字を残してほしい』との希望により、『湯布院町』が誕生しました。そのため町全体を表す場合や、比較的あたらしい施設には『湯布院』のほうを使います。
そして昔からある施設や地名などには『由布院』のほうを用います(由布院温泉、由布岳、由布院駅など)。ただJRの看板特急『ゆふいんの森』だけは、両者に配慮してか、あえて『ひらがな』の名称を使っています。現在、湯布院町はさらなる合併のため、『由布市』となっています。昼食は『ホテルゆふいん山水館』でバイキングにしました。昼食後、ふたたびやまなみハイウェイを南下し、途中の『朝日台展望台』で休憩をとりました。ここから九重連山の眺めがいいです。
由布院同様にこの地域でも『九重(くじゅう・ここのえ)』と『久住(くじゅう)』のふたつの表記と読み方があります。それは近代になって山麓の北側に『九重町(ここのえまち)』と『久住町(くじゅうまち)』のふたつが誕生したからで、やがて地域全体をさす場合どちらの表記を用いるべきかと大問題になりました。
紆余曲折のあと、現在では火山群や地域全体を指す場合は『九重山』や『九重連山』を用い、連山の中の主峰の山を指す場合は『久住山』を用いるということに落ち着いたようです。しかし論争は依然つづいているようで、これから向かう花の公園である『くじゅう花公園』や『阿蘇くじゅう国立公園』などでは両者に配慮してやはり『ひらがな』を用いています。
朝日展望台を出て『飯田高原(はんだこうげん)』に入ると正面に噴煙をあげる九重連山を望む直線道路にでます。なかでも『長者原(ちょうじゃばる)』と呼ばれるこのエリアは、やまなみハイウェイを代表する定番のビュースポットとなっています。
ちなみに『九州の屋根』とも呼ばれる九重連山はいずれも1700メートル級の火山が連なっていて、主峰は久住山(1787m)ですが、最高峰は『中岳』の1791メートルで、これは九州本土の最高峰ともなっています。なおこの一帯は、地熱地帯で、地熱発電所としては日本最大の『八丁原発電所(はっちょうばるはつでんしょ)』があります。
『くじゅう花公園』は20万平方キロメートル(甲子園球場約50個分)、標高800メートルにある花の公園で、久住山を借景として、四季折々の花々が咲き乱れます。
4月中旬から下旬はチューリップ、4月から6月上旬はポピーとビオラ、6月中旬から7月中旬はラベンダーやサルビア、9月から10月はコスモスという具合です。僕はこの公園が好きで仕事でも何回もコースに組み込んでいます。開園は1993年で、ピーク時には年間60万人の入場者を記録しましたが、近年は減少気味で、2009年より新会社を設立し、営業をつづけています。ぜひこのまま頑張ってほしいものです。(つづく)

 
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