親しらず新潟
親という字は「木の上に立ち見る」と書くんだよ。
親は「木の上に立ってでも我が子を探し見守るものだからね。」
と母から教えられました。
由来は定かではありませんが、小学生の私は
「ふーん」とあいまいに納得したのを覚えています。
二十歳を過ぎたころ
年末の休みを利用して佐渡島にいきました。
シーズンオフの佐渡は人も少なく
観光の拠点にした民宿のお客は私一人です。
宿のご夫婦は、わたしがあちこちを観光して帰ってくるたび
一緒に夕食を囲み、「今日はどこへいったか」、
「明日はあそこへ行けばいい」などと教えてくれました。
さらにお酒がすすめばその土地の昔の風習から、若き日の武勇伝まで語られ
最後はカラオケでご主人の十八番をご伝授していただく毎日です。
後半は移動に便利だからと自家用車まで貸してくれ
寒いだろうと暖かいダッフルコートを持ってきてくれました。
わたしと同じ年頃の息子さんがいるそうで
コートはその方のものでした。
「勝手に借りては…」というわたしに
「成人して遠くに働きにいくようになってからは
あまり帰ってこないから気にしなくていい。」とのこと。
そういえば正月休みなのに帰ってくる気配はありません。
ありがたくコートを拝借して残りの日々を楽しみました。
帰り際には「嫁さんが見つかったら連れてこい。」とまでいわれ
旅行後何年かは、年賀状も頂きました。
「これはまた、気に入られたものだ」と喜んだものです。
月日がたち、わたしも結婚して子供が生まれました。
小学校でならった漢字を練習している息子をみていると
ときどき佐渡での日々を思い出します。
佐渡のご夫婦に、わたしはそんなに気に入られたのではなく
わたしを通して、帰ってこない息子さんを思っていたのだろうなぁ。
親という字は「木の上に立ち見る」と書くんだよ、と
そろそろ子供に教える時がやってきたようです。
●佐渡の「風習」と「丸干しいか」
日本海に面した佐渡、外海府(そとかいふ)海岸には小さな入り江がたくさんあり
昔はそれぞれの入り江がひとつの村落だったそうです。
村の若い人はとなり村から「嫁さん」を貰うこともよくあり
当時はいまほど格式張らずに一升酒とスルメ2枚が持参金代わりだったとか。
スルメといえば佐渡には「丸干しいか」(佐渡本舗)なるものがあります。
いかをそのままワタごと干したもので、
軽く炙ったときの香ばしい香りはナマツバものです。
普通のスルメとちがい、噛めばにじみ出るワタの苦みが何ともいえず、
これからの季節、ビールの肴に最高の逸品です。
昔からの祝い物だった「いか」は、
今も人々に喜ばれる一品として残っていました。
このページのトップへ
|